(読書)不器用で苦しむからこそ得られる役割がある ゴッホ最後の三年

 

ゴッホ  最後の3年

ゴッホ 最後の3年

 

 

自分で自分の耳を切り落としたというから余程気が短い変人だと思っていたけど、それ以上に、人と生きることに対してとても不器用な人だった。

 

理不尽なことがあると、騙された!と腹を立てる。絵をバカにされると怒り狂う。その激情の裏側には、わかってくれない、理解されていないという深い悲しみと孤独があるようだった。

 

画家は孤独ではいけない、と画家のあつまるアトリエをひとりで作ったゴッホ。しかし、訪ねてくる人たちもなかなか続かず、親友ゴーギャンにも逃げられてしまう。皆のためと言いながら、孤独を抱えていたのはゴッホ自身だったのだろう。独りよがりで身勝手に見える行動も、読み進めるうちに愛らしくなってくる。

 

人とのコミュニケーションが壊滅的にできないゴッホが、ただの苦労人で終わらないところがこの本の面白いところ。ゴッホは耳を切り落としたあと病院で療養する。これまで感じたままを描いてきたゴッホは、病を患った体が感じる苦しい世界をそのまま絵に描くのだ。それが人々の感動を生んだ。

 

不器用で孤独だからこそ、その自分から目を逸らさずに芸術へと形を変えていくって、すばらしい力だと思う。誰にでも役割はあるんだなぁーと改めて思った本