(読書)誰にでも葛藤はあるんだなぁと改めて。 猫を捨てる

 

猫を棄てる 父親について語るとき

猫を棄てる 父親について語るとき

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2020/04/23
  • メディア: 単行本
 

 

 

戦争を経験するということは、不運な時代を生きてしまうことである。しかし、その中で奇跡的に生き延び、家族を作ったからこそいまの世代が存在している。そう考えると、自分の存在が偶然でなりたつ不思議なものに思えてくる。

 

不遇な若者時代を過ごした筆者の父にとって、好きなだけ勉学に励むことのできる息子は複雑なものだった。自分がやり逃したことを息子にはやらせたい、そんな気持ちも強かった。結果、父と筆者は疎遠になる。筆者からすれば、父としっかりコミュニケーションをとることよりも、より明確な人生の目標があり、やるべきことも多かったのだ。そして守るべき家族もいた。

 

だが一方で、親の期待に添えなかった痛みはずっと持っている、と筆者は言う。村上春樹ほどの人間でもそのような葛藤があるのか(そりゃそうか?)という驚き。家族の問題というのは普遍的に誰にでも存在しているんだなぁ、、と今さらながら改めて。

 

けれども、守るべき家族がいたことは、心のささえとしてとても大きかったのではないかとおもう。妻がいなければ、拠り所は親しかなかったはずだ。自分を影ながら支えてくれる家族を見つけることで、男性は親から自立できるということなのかもしれない。でも女性は、、、。うーむ

 

そして、いまのコロナは前代未聞と言われている。前列に従わないあらゆることが起きているが、戦争のときも同じだったのではないか。未来を考えると不安になるが、過去を振り返ると安心するような気がしてくる。